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北への旅

2014年10月23日、19時。上野駅下のホームでは札幌行の列車北斗星札幌行はすでに出発を待っていました。晩秋の北海道への旅路の始まりです。

きっかけは余市マイウイスキーづくりに当選したことでした。今年結婚した記念にしようと何度か申し込んでいたのですが、5月と7月は落選し、3度目の正直で申し込んだ10月の回にようやく当選となりました。当たったからには余市まで出向く必要があります。新幹線&特急も考えましたがここは北斗星に乗ってみようじゃないかという次第で計画を立ててみました。ただし往復陸路は時間的に厳しいため帰りは飛行機に。早割の期限も迫っていましたので。

と軽く考えていたものの情報を集めると容易ではないことがわかってきましたがそのあたりについては以前の投稿を参照してもらうとして、いよいよ乗る段になったというわけです。

思えばここから寝台列車北斗星に乗ったのは金沢へ帰る特急北陸に乗ったとき以来、もう10年以上も前のことでした。そのころ、2001年当時は上野発の夜行列車は金沢行の北陸、急行能登、青森行きのあけぼの、北海道に向かうカシオペアと当時は2往復あった北斗星と、数多くあったものですが北陸も能登もなくなり、あけぼのも今年廃止になり、残るカシオペアも北斗星も風前の灯という状態です。

……などと感傷にふけってもやむを得ないことなのでとにもかくにも乗り込みます。ひとまずデュエットに落ち着いたもののシャワーを浴びたいとの所望があったため発車前ながら食堂車に向かいます。そこで並んでいるうちにごとりと列車が動き出しました。あっさりというかあっけなくというか……。風邪気味というより声が酷いことになっていたので私はシャワーはよすことにし、妻だけ翌朝のシャワーを予約、発車したてのあわただしい車内を部屋に戻ります。と途中で車掌さんと行きあいました。そうだ検札してなかったなと切符を差出し、代わりに部屋の鍵をもらいました。

さあ今度こそ部屋に落ち着きます。グランシャリオのフランス料理コース1階の部屋なのでホームの待ち人と目があったりしつつ木曜夜の東京を疾駆する北斗星、乗り心地はまずますでしょうか。赤羽を過ぎ、荒川を渡り、大宮に到着するころにはすっかり寛いでしまっています。つい1時間前は京王線車内で遅れやしまいか、とひやひやしていたものでしたが。大宮停車、のあとほどなくしてディナー開始のアナウンスがかかります。さっそく出向く私たち、スリッパはダメだったので仕切り直してから食事券とJTBのクーポンを渡すと4人掛け席に案内されます。今回は奮発してフランス料理コースにしてみました。となるとワインを飲まないといけませんがのどがつぶれている状態で酒飲んでいいのだろうか……。飲んじゃいました。しかもサッポロクラシックまで追加、ああ酒飲みの悲しさよ。暮れていく関東平野を眺めながらの食事という非日常体験はなかなかできるものではなく、貴重な経験をさせてもらったかな、と思います。

そのあとはひととおり車内を巡ったりしながら部屋に落ち着きます。列車は郡山、仙台、盛岡とみちのくの大地を駆け抜けていきます。車窓から眺めるとホームから手を振られたり、通勤列車に見送られたりしながらまったりと寝台の上で座っていましたが軽く酔っているのも相まって眠気が勝ってきたようなので就寝。

夜中なんどか目が覚めたもののどのあたりを走っているのか皆目見当もつかず、目が覚めるとすでに北海道の地を走っていました。いつの間にか青函トンネルを通過していたようです。木古内駅では真新しい新幹線高架橋と錆びたレールの対比が新旧世代交代を象徴しているようでした。そういえば江差まで汽車で行ったのはいつのことであったか……。次回は新幹線で来ることになるのでしょうか。その時にこの列車が残っているかは定かではないですが。朝日の差し込む列車は津軽海峡を走りながら函館に向かいます。妻もシャワーに向かいます。ちょうど函館到着とかぶってしまったので私はロビーカーで待ちます。シャワーはなかなか快適だったようです。ロビーカーも朝食待ちの乗客で混みだしてきたので早々に部屋に戻ります。

函館で向きを変えた列車は大沼公園を過ぎ、駒ヶ岳を遠くに見据えながら内浦湾を走っていきます。上野を出発してからまるまる24時間以上乗っていますがまだまだ乗っていたいのは不思議なものです。羽田から新千歳まで飛行機でわずか1時間で行ける今、でもこういう旅の選択肢も絶対に必要と思いますが昨今の拝金主義極まった世相はこういう列車の存続を許さないようですね。青函連絡船がなくなったのは中学生のときですからかれこれ四半世紀走ってきた北斗星は今後どうなるのでしょうか。答えはわかりませんが私たちは余市に向かうため乗り換えのため長万部で下車しなければなりません。荷支度を整え、長万部のプラットホームに降り立つと凛とした北国の冷涼な空気を感じます。ああようやくたどり着いたのだと感傷に浸る間もなく列車は走り去っていきました。

Author:sphere | 2014-10-23 23:59:38[Categories:]